四月は

April is the cruelest month, breeding  四月は残酷な月 傷口が開く
Lilacs out of the dead land, mixing   死者の国を混ぜかえし ライラックが咲く
Memory and desire, stirring       記憶は渇望とめぐりくるい
Dull roots with spring rain.      動かぬ根を 春の雨が降りしだく

エリオットの「荒地」 The Waste Landより。
私が訳すると妙な感じになりますです。

葬式へ行ってきた、そう言って息をつかれた恩師に、
そうですか、と息をついて言ったのは、まだ花もほころびはじめのころ。
この数日ですっかり花ざかり。
桜はふさふさと白いばかり、ざわざわ胸がそよぎます。

通院先は花ざかり。
ここの土地の風はしっとりおもく土や水の香りも濃密で、私には強い。
長く通っている病院ですが、はじめて診ていただく先生に構えができてしまっていました。
ひとこと言われて、声を落としてひとこと話し、そして言われたひとことが、ととんと耳底を打ちました。
ほんのひとことで、私が息をつく場所を踏みしめ整えてもらえたのがわかる。
引き受けるとか受け止めるとかではなくて、すでに容れられている。
痛みがと口にしたとき、患者の安楽をみられているのがわかる。
ちいさく息をつきました。
それにしても、にぎやかな感じがしていたのが不思議です。
先生の患者さんたちのざわめき、苦しみや喜び、くちぐちに言ってこられた先生への小言や労わりや感謝のざわめきに、触れたのかもしれません。
にぎやかなのもいい。
今年も四月がはじまります。