2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

原植物

診療台に身をもたせ、目を閉じる。クリームいろのひかりのなか、やわらかに手をとられる。 脈をとられる先生の手。治療を受ける。息がとおる。ぼらぼら涙がながれる。空調がぶわりと暖かい。 わたしの足、わたしの腕。診療台のうえのどこにあるのか浮かんで…

こんぱっしょんへ向けて

ハンナ・アレント「集団責任」『責任と判断』ジェローム・コーン編、中山元訳、筑摩書房、2007年 より抜粋(195-196頁)罪と責任 自分がしていないことにたいしても責任を負うことがあります。ただし自分がしていないことについて責を問われるとしても、自分…

ガロア

花田清輝「III 復興期の精神 群論―ガロア」『花田清輝全集 第2巻』講談社、1977年より抜粋(←初出:「文化組織」1942年5月)…… いかにも現実というものは、求めなくとも、しばしば魂と肉体を切りさくものだ。そうして、その結果は、一見、求めて絶ちきった…

セイロガンの香り

紙で指を切りました。先日のことですが。思っていたよりざっくり。 救急箱からいただいた絆創膏はセイロガンの香り。ふんふん嗅ぎながら過ごしましたさ。知覚が低下しているときに動けると怪我をしやすい。実際にしてきましたし、したのでした。 怪我をして…

フォネーとロゴスのあいだで

岡田温司『アガンベン読解』平凡社、2011年より抜粋…… 『アウシュヴィッツの残りのもの』でアガンベンは、レーヴィが伝える「フルビネク」と呼ばれていた、見たところ三歳ぐらいの「話すことができず、名前もない」幼い少年の話を取り上げている。…(略)…誰…

飛ぶ

井上洋介「ビックリえほん」啓林館 ジョイフルえほん第20号より抜粋おなかの すいた へびさんが じぶんの しっぽを ちぎって たべた (…中略…) それで いまでは あたまだけ - ウロボロスさんもどうぞそのまま、ひとくちちぎってめしあがれ。以前、ある先生…

跳ぶ

丸山圭三郎『ホモ・モルタリス―生命と過剰・第二部』河出書房新社、1992年より抜粋(127頁-128頁) (初出掲載:「文藝」1991年夏季〜冬季号) 1990年の暮に河合隼雄氏に誘われて比叡山にのぼり延暦寺の堀沢祖門師とお会いした。 「禅の悟りは万巻の書を読破…