ほも・ろくえんす その1

六車進子『自然と歴史 −文化社会学論集−』1989、関学生協出版会
「ホモ・ロクエンス ―比較文化的考察― 」より

…人間の創造的行為のひとつは、艱難辛苦の果て、渾身をかたむけて、ようやくひとつのことばを発すること、そのことの中にも、いや、そのことの中にこそあるように思われる。すでに、惰性化し、制度化されたことばでは表現しつくせないような、人間の意識の深みにおいて生成・躍動する新たな意味、それを手繰り寄せてくるような発話行為

……おそらく、ことばは、「渾沌」(荘子)にざわめく生命の発露として、本来、このような、人間のさまざまな意味産出能力のひとつなのである。それは、それによって、自己のまわりに新たに世界を分節化―形骸化してゆく、新たなコスモス創造のひとつの能力、「存在喚起能力」なのではあるまいか。…

                                                                                                        • -

著者は、現象学的社会学・蔵内数太博士のお弟子さん。
あの時代、西田や三木は「無」へと向かったが、蔵内数太には「論語」があった。…そうであるならば。
日本思想の問題。